秋元康☓宇多丸 スペシャル対談 全文書き起し6-5【ウィークエンド・シャッフル】

※写真は2008年の対談時のものです。

宇多丸 ちなみにそういう、揺れ動く面白さというのか、僕なんかが見てもほんとに面白いと思えるような、なってきたものって結構途中からですよね。

最初に僕対談でお会いした時、2008年の時点で、ちょうど谷間の時期と言うかデフスターの契約が終わって「Baby Baby Baby」でた直後くらいで、まだ、キング手前ぐらいですよね。

で、そのとき僕、すごい印象的だったのは、ぼくはそれまでのAKBって正直、非常に内向きなやりかたで、これが今の時代確実かもしんないけど、まあ、正直むちゃくちゃ面白い感じがしないんですけど、いったら、ほんとは色々、俺だってふざけた事やりたいんだけど、現状のユーザーのニーズがそこに無いから、まだ難しいんだみたいなこと仰ってて。

そしたら、そのあと2009年位から急激に、こうグイグイある趣、求心力を保ちながら遠心力的な仕掛けと言うか、仕掛けって言い方はよくないかもしれませんが、まあ、総選挙しかり、組閣しかり、あ、これは面白い、ようするに引っ掻き回していくっていうか。

これはどういう心境の変化があったんですか?

秋元 どうですかね、でも、あんまり考えてないですね。よく言うんですけど。あんまり戦略、海外戦略がどうしたとかあんまりなくて、その時になにかこう、ヒントですよね。ヒントがあって、そのヒントからなにか企画につながっていく。
宇多丸 たとえば、総選挙、組閣って、それまでからすればファンだってなんだそれっていうようなことだったりするわけじゃないですか。結構、僕その本当は色々やりたいんだけど出来ないから本当にやっちゃうまではけっこうジャンプがある気がするんですけど。
秋元 いや、もうやろうといったら早いですよね。ただ、それが全てにこう、目を光らせてるわけに行かないんで、僕が思ったものと違うなぁということは多々ありますけどね。
宇多丸 いざ、イベントにしてみたら
秋元 そうじゃないんだよねぁ、って思うんだけど、まあ、それは、大きくなりすぎたのかも知れないですね。

つまり、ちゃんと説明すれば分かるんだけど、もう、一つ一つにたいして、まず、たとえば今回の宇多丸さんの番組に出してもらうとかが、一つ一つ、これはこういう意味でねっていうのやれればいいんだけど、たとえば昔はそれをぐぐたすでやろうかなと思って、ある種の公式コメントやろうと思ったんだけど。

その時間もなくなってくるとやっぱり一つを答えると、これは何で答えないんだ、と答える事に意味が、いや、時間がないんだよ、という風にはならない。

ぜんぶ起きる事に対してはこれはこうでねって風に説明していかなきゃならない、これも大変なんですよね。

宇多丸 なんかでも、僕やっぱ今日お話を伺っていると、説明すれば。たとえば秋元さんが、俺も迷ってるとか、これでいいと思っていなかったとかっていう事こそ、みんな聞きたい気がするんですけどね。
秋元 いや、でもそれをね、たとえば、恋愛禁止条例ってのはそういう意味でいったんじゃないんだよね、なんていっても、何を言っても、後出しじゃんけんとか、いいのがれとか、なんのあれでもなるんで、もう、それはしょうがないかなぁって思ってるんですよね。
宇多丸 けっこうちなみに、そういうネットの意見とかってこまめにチェックとかされてるんですか?
秋元 いや、僕はしないですけど、やっぱりスタッフが重要なもの、たとえば支配人の信任問題でSKEのファンがすごい炎上してますとか、なんで?こうでこうで、桑原がこういう発言してとかって事なんかは、みんな送ってくるんですよね。
宇多丸 なるほど。いやなんか、ちょっとAKBそのものの話とずれますけど、秋元さんぐらい、それこそアンチっていうか、叩かれる人いないと思うんですけど、そういうのって平気なんですか?っていうバカみたいな質問なんですが。
秋元 いいえ、ぜんぜん平気ですよ。だから、まえにも冗談半分、本気半分で、そのクソ曲っていわれるのはつらいって
宇多丸 クソ曲っていうのは僕のボキャブラリーにはないってことを強く言っておきたいですけど 笑。
秋元 あの〜、つまり全然クソ曲でも、ね、それ、人、好きずきだからいいんだけど、やっぱり誰にもやっぱり言う権利はあると思うんですよ。

僕らはエンターテイメントでやってるんで、あるいは僕が政治家だとしたら政治的な事をああだこうだいっても、ただやっぱり事実を知らないまま、その、いろんな所の風評を聞いて、それで言ってる人が時々いるので、それがちゃんと見てくれれば分かるのになぁとか思うのはありますね。

宇多丸 やっぱりそれが、不可視の存在に見えるからですよね。

あの、僕ドキュメンタリーの、2でダークな所を出して、3でその、でも、その少女達の動機の部分というか、そこを描く、次は大人達との関係性だろうという風に思うんですけど、この間のNHKのドキュメンタリーとかは、あの、よかったとおもうんですよね。見えると安心する。

見えないから化け物だと思っちゃうっていうのは絶対あると思うんですよ。こんなに一生懸命曲作ってるんだったらって、たぶんコンバットRECも、クソ曲と言わなくなる。

曲の話をすこし伺いたいんですけど。AKBのシフトが僕には2009年くらいから、かわったように見えると。それと同じように曲も、だいたい同時くらいですかね?なんかちょっとこう、かわったように。

秋元 変わりましたよね。
宇多丸 それは意図的に?

秋元 いや、変わってない、いや、あの方法論は変わってないですよ。

つまり毎回AKBに曲を提供してもらって、膨大な数をずーっと聞いて、そのなかで、これだなって言うものを決めて、アレンジ発注して、それに僕が詩を載せるって言う手法なので、その時のテーマを出す場合もありますね。

今回はストンプだと。ストンプをやりたいんだと、というようなテーマを出す場合もありますが、あとは、今のAKBだったらどんなのがいいと思うって言う場合ですかね。

宇多丸 「River」なんか明らかに、たとえばデフスター時代とか、2008年より前だったら、無い曲だと思うんですよ。あきらかに外向きというか。

たとえば、総選挙をやってます、そういうグループの曲ですっていう、ようするに外に向けてAKBを説明する、PVもそうですし、僕はそう見えたんですね。

ようするに、外向きのなんかこう、攻めのシフトになってきたっていう風に見えたんですけど。それは特にやっぱり井上ヨシマサさんが曲になってからそう感じるんですけど。

秋元 でも、まあ、ヨシマサも、ねえ、「涙売りの少女」とか「軽蔑していた愛情」とかね
宇多丸 なんなんですかね、外に向けた「River」とか「Begginer」みたいな勝負曲と、あと、たとえば夏のシングルはこれは多分すべての曲の中からトップの曲を選んでやっているのであろう、っていう気合いの部分と。
秋元 あの、や、もう、あの〜、それすら予定調和って言われるんですけど、夏になったらね、夏、ほら、海辺でね昔で言えばでかいラジカセで、もう、爆音で聞きたくなるような音楽って言うのが夏のテーマなんですよね。で、秋になった時に、かっこいいAKB、ちょっと踊れるAKBを出さなきゃ行けないかなって言うのは
宇多丸 それで「UZA」とかでてくるということですか?
秋元 うん
宇多丸 なんか、それもね、それは秋元さんの中で、ぼくがAKBの楽曲を聴いてて、今たとえばアイドル戦国時代と言われていて、ものすごいこう、特に曲がまあ、おもしろくというか、攻めた感じの曲がやっぱり増えてきてると。

ももクロでも何でもいいですけど、そのなかでAKBって明らかにちょっと、いってみればちょっと保守寄りじゃないですか。アイドルソングを保守っていうか。その、保守感っていうのは意識されてるんですか?

秋元 いや、してないですよ。してないけども、まあ
宇多丸 これ以上は振り切らないようにしないとって?
秋元 いや、全然全然。そういう楽曲があって、これおもしろいなあと思ったらそれは、ねえ、その曲で勝負するかもしれないし、けしてAKBのファンはこういうのが好きで、とか、よく言われる「カノン進行で」とか、そういうのは別に無いですよ。
宇多丸 なんかその、ユーザーがついて来れないからこういうのは(やらないとか)
秋元 ううん、全然ないです、ないです。だってそれは、まあ、もちろん、なんだろ、これはシングル曲かなぁ、シングル曲じゃないかなぁっていうのは考えますけれども、でも、けしてそれだから、いつもね守りに回って、AKBはこの辺でいいんじゃないかってことは無いですね。
宇多丸 まあ、ドキュメンタリー拝見して思ったのは、前にお会いした時に、僕は音楽の事はプロじゃないから、その、編曲、アレンジの事は分からないし、音楽的傾向のことは分からない。

たぶん2008年というAKBの置かれている時代もあって、若干自信の無い発言をされているっていう風に僕は思ったんだけれども、詩は全部書かれてるじゃないですか。そこだけは譲らないのって何でなんですか?

こんな忙しくて、まかせたっていいんじゃないですか?任せる方向にシフトする

秋元 うん、任せせたい。任せる方向に。

本当はやっぱりそのAKBがあってNMBがあって、SKEがあって、HKTがあって、全部プロデューサーを変えたいですよね。

宇多丸 あ〜、そうですか。まず、それはいままでしてこなかった、できなかったんですか?
秋元 やっぱり、ある部分の形が作れないと
宇多丸 軌道に乗るまでですか?
秋元 それと、やっぱり任せた時に、そうじゃないんだよな、っていうのがある間はダメ。

どこかで、いや、そういうもんなんだ、人が、ね、プロデューサーが変わればってところが、どこまであるかですよね。

宇多丸 ほんとはまかせたい?
秋元 うん
宇多丸 あ〜、なんか今回、あれですもんね。ノースリーブスのこじはるさんの曲が卓球さんが、ね、珍しいなと思って、完全に。
秋元 そう、だから今回から、徐々にそういうことをしていこうと思って、今回ノースリブスは、峯岸は川本真琴さんの曲をつかい、たかみなは小室哲哉さんの作詞作曲アレンジで
宇多丸 その、実験の一発目って感じですね
秋元 うん。あと、だからそれも今後多分増えてくると思いますよ。
宇多丸 僕はその秋元さんが不過視な分、絶対はんこを押したい部分なのかと思っていたんですよ。
秋元 いや、それは無いです、無いです。
宇多丸 あのドキュメンタリーみてると、だって、これもう秋元さんが作詞する事による無理が起きているのでは?っていう
秋元 うん、まあ、ありますね。
宇多丸 あんなPVの撮り方はあり得ないですよ。
秋元 一つは、説得力、スタッフに対する説得力もあると思うんですよね。つまり、僕が詩をかいて、全体図を作って、秋元さんもあれだけ頑張ってるんだから、頑張ろうよってあるじゃん。

これがもし僕がだいたいの大まかな事だけいって、僕が、あの〜、秋元さんどこいったの?いや〜、なんかどっか旅行いっちゃっていないみたいよってみたいな事ではない、あの人多分一番働いてるよって。

あのひと一番寝てないし、もう、ガンガン詩が送られてくるっていう事と、つまり、たとえば犬のうんちふんじゃうかねって、そこで犬のうんち踏んじゃうかねっていうのも、AKBの歌詞としてありなんですよっていう事が伝えられたら、作詞家変わってもいいと思ってるんですよね。

宇多丸 現状そこまで踏み越えられるのが、秋元さん以外
秋元 そうそう
宇多丸 雇われている側で、うんち書いてきて、通るって普通思わないからっていう
秋元 だから、だいぶそれは、なんだろ、やりたい事とか結局はAKBってなんか、ガチさが面白いんだなって、その、なんかこう大人が分かったような訳知り顔、あるいは今まで自分が経験でね、アイドルとはこういうものなんだ、という物ではない。

たとえば、ある所である人が、え〜、うちのメンバーにね、うちのスタッフですけど、あるメンバーにね、選抜になる方法はなんですか、ってメンバーがその人間に聞いたら、礼儀正しくする事だと、ね、ちゃんとスタッフのみなさんに愛されてって。

たぶん、それは彼のアイドル論なんだよね。でも、それがやっぱりまだ僕の中では、そこにまだそういう発言をするスタッフがいるという事が、やっぱりAKBって言うのはまだ、スタッフ間でも意思統一できてないなと。

つまり、そこのなんか、AKBって、けしてそんないい子達だけじゃなくて、そこであえて、挨拶もしない、なんとかで、でも、それに、挨拶しなきゃダメだよっていいながらも、でも、このこの不思議な魅力とは何なんだろうって。

で、つまりその子をフィーチャーしながら、挨拶させる事を覚えさせようっていう風にならないと。

宇多丸 キャラクターとして、平準化させるっていう方向に行っちゃ絶対ダメなんだということですよね。
秋元 そうそう。

>>6に続く

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