秋元康☓宇多丸 スペシャル対談 全文書き起し6-2【ウィークエンド・シャッフル】

※写真は2008年の対談時のものです。

宇多丸 やっぱり僕思うんですね。指導とか、ケアというかですね、そこの問題な気もするんですけど。

たとえば、えっと総選挙というイベント。あれは要は、僕らがちょっと露悪的な言葉を使っていうならば「残酷ショー」じゃないかと。
あの、たとえ芸能界が熾烈な競争の世界だとはいえ、目の前で順位つけられて、その様が残念ながら非情に面白いのも事実だけれども、まあ残酷でもあると。

で、僕が思うのは、あれをやるならば終わった翌日から数日掛けてもいいから秋元さんが全員と面談して、その順位の分析とアドバイスみたいな事をそれこそが最高のカウンセリングだと思うのね。とか、そういうケア、あるいは日頃の、たとえば去年のある時期までの前田敦子さんとかが、やっぱり分かりませんけれども、大変追いつめられてるように見えると。

前田さんに限らずですね、ここまで自己というか、なにかそういう彼女達が自分で思い詰めちゃってみたいなことが起きてないのはぶっちゃけ運がいいだけじゃないのかという。
なんかそういうメンタルケアみたいな事をされるっていう動きはないんですか?

秋元 いや、もちろんです。そうとうメンタルケアしてますよ。
宇多丸 それはどうやってやってるんですか?
秋元 それはもちろん、各マネージャーからもちろん僕が直接気付いた事であれば僕が直接、どんな下位メンバーであれ、あるいはたとえば研究生で僕も名前がよくわからない子でも僕がその子のメールアドレスを聞いたり、あるいはマネージャー経由で指示する場合もありますし。

それはもちろん、やっぱり、ね、なんだろな、AKBっていうのは、そんなに世間が思うほど、なんだろ、ビジネスビジネスでもないし、あの、もっと学校に近い感じだと思う。

宇多丸 学校は学校ですよね、あの人数は
秋元 だから、やっぱりね、たとえば、よくAKBが、AKB商法とかって言われるけれども、でも商法だとしたら、きっと、もっと楽な方法があると思うんですよね。
宇多丸 たとえば、その、完全管理の方向とか?
秋元 うん、とか、あるいは、たとえば握手会にしてもね、握手会ってすごいお金がかかってね、お金だけじゃなくって手間もかかってる。

すごい大変なことをしてるのは、やっぱりAKBの、元々会いにいけるって言う、つまり、なんだろね。昔はね、本当にそこで「麻里子、あした頑張れよ」とか、たとえば「あっちゃんもうちょっと、なんか元気が出ないと、なんか省エネダンスみたいに見えるよ」とか、「手ののばし方が悪いんだよ」とかっていうことを言えたんですよ、むかしはね。

それがどんどんどんどん劇場が満員になって入れなくなって、そうなるとそういうチャンス、自分がアドバイスして、たしかに昔はそのアドバイスによって、なんか、手を伸ばして、きれいになったりした子もいたりしたんですよね、ダンスが。

だからそういう事があるいは僕も劇場に来てロビーでみんなの話を聞きながら、なるほどな〜とおもうこともいっぱいあったし、だから割と僕は、あの宇多丸さんのラジオもそうだけども、みんなの話を聞いてなるほどなと思う事は、どんどん取り入れていくし。

そういうものがどんどん、場が無くなってくるとやっぱりその握手会っていう事の近さが良かったりするのかなぁ、とも思うし。ただ、それが正解なのかも分からないよね、まだ。

宇多丸 お〜、そうですか?秋元さん自身も?

その、たとえば、ケアとかもしている、してはいるという、そこも可視化してしまえばいいじゃないですか?なんか、たとえば秋元の姿だけが不可視なのが、ものすごい、あらぬ妄想を抱くんだと思うんですけど。

秋元 それはね〜、やっぱりね〜、そうかも知れないけれどもやっぱり、メンバーを守る為にはやっぱり可視化できない部分はありますよ。
宇多丸 もちろんね、それはそうですよ。
秋元 だからそうなると、やっぱりそこが、たとえば運営なり僕の責任にしてた方が、まあ、いいかなっていうところもあるよね。
宇多丸 なんか、でも、いたぶって、おもしろがってるだけじゃないかって見えちゃう。
それは本意じゃない訳じゃないですか、たぶん。

僕も自分たちで残酷ショーだっていいながら、このあいだの映画評でも言ったんですけど、ちょっとそれは、その言い方として語弊があるなと。

あの、たとえば本来なら人気のない子はただ、こう表舞台から消えていくだけのところが、あの、あの子落ちちゃったっていうのが見えるという事の良さもある、っていうふうにもあるなって思って、それはただ残酷とは…。

秋元 あのねえ、一番のテーマは、みんながセンターを目指すがセンターは一人しかいない。ね、どんな時でも。で、その時に自分の居場所を見つけるってことが、この、最大のテーマなんですよね、AKBにとって。
つまり、僕はそれが自分がプロデューサーとしての使命だと思っていて、そのもちろんセンターにふさわしい子、センターでいこうって子もいるんだけど、同じように、どれだけ…。
だからヒントをくれってのが一番なんですよ。
だから、たとえば指原はヒントをくれたんですよ。つまり「2,5秒しか映ってないんです〜!」っていう。そうすっと2,5秒しか映っていないって事がなにかで引っかかってくるし、内田眞由美って子がね、あの〜、一回目のじゃんけん大会で優勝して、ま、でも、圏外だったの総選挙で。で、自信をなくしたんだけど、だけど、あるときコント番組で岩のかぶり物をして、それがすごく面白くて、で、いま本まで出せるようになった。
あるいは仲谷がずっと声優になりたくて「非選抜アイドル」って本を出して、いまそればベストセラーになったり。
つまり、なにかそれは、大堀なら大堀でセクシーとか、なにかこう、ね、ヒントがあるとこっから広がるんだけど、どうしてもたとえば前田あっちゃんのようにセンターに行きたいとか。
だからたぶん今回のね、高橋栄樹の監督の作品もセンターとは何なんだろう、つまりこのオマージュをね、あの、センターを目指す物達は何なんだ、だからあれはね、ちょっと、先週の放送ちょっと違うのは、あれは、模してる訳じゃないんだよ。つまり再現ドラマのようにしている訳ではなくて、単純にもしかしたらこういうことなのかな、と
宇多丸 イメージ映像の、初期、敦子さんの後ろ姿を模している、ドキュメンタリーとしてはやり過ぎじゃないかというのをいいましたけど…
秋元 あれは模してるんではなくて、イメージだと思うんですよね、監督の。
だから別にわざとガラガラの客席を作った訳でもなくて、たまたま撮影がたぶんカラの劇場を使ってその、何期生かの女の子達を使ってあなた達はセンターになりたいですか?なりたいですって言うようなものを多分撮ったんだと思うんですよね。

宇多丸 センターとそれ以外の、その、まあ敗者、というか、全体のたった一人の勝者と言うか。
大抵の人は敗者な訳だけれども。
秋元 だから、敗者ではないんだよね。
宇多丸 敗者という言い方がね、なんか、あの刺激的かもしれませんけど。
秋元 だから、たとえばなんだろなぁ。その、ぼくはよくねぇ、野球に例えると「野球古いよ秋元」って言われるんだけど、たとえが。だけど野球でリトルリーグからその後ね、4番でエースでピッチャーでね、それがやっぱり、プロ野球になりたい、あるいは有名な中学、有名な高校野球のね進学校でも行くと、どんどんどんどんすごい人たちが集まってくる訳じゃないですか。そのなかで必ずしも野球が好きなのか、ねぇ、4番を打つ事が好きなのか、ピッチャーが好きなのかによって違ってきて、で、どこかでみんな、「あ、俺は野球が好きなんだ」もしかしたら、裏方に回るか…
宇多丸 裏方でもいいやって人もいれば
秋元 そう、そこがたぶん、いま一番AKBのなかで一番そのどういう道を見つけてあげるかっていうことが、大切だと思うんですよね。

>>3に続く

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