秋元康☓宇多丸 スペシャル対談 全文書き起し6-3【ウィークエンド・シャッフル】


※写真は2008年の対談時のものです。

宇多丸 ちなみに秋元さん、おニャン子の時から、本来だったらアイドルの中では、ようするにはじかれちゃうような人に役割を、というか、スポットをあてるみたいのを、あの頃からやってますよね?まあ、元祖っていうか。

それはやっぱその、今も同じような意識ってのは最初からあったって感じですか?

秋元 そうですね、僕はやっぱりその、プロデューサーっていうのは、0を1にする作業でなくて、0.1を1にする作業なんで、0.1を探してるんですよね。

だからなんかこう、たとえば小嶋陽菜はセンターにならないけど、こいつのギャグセンスは世界一だな、とか、たとえばみぃちゃんの、もうアドリブでしゃべらせたら、この人はほんと天才だなとか、指原のへたれぶりってのは、なんかこうおもしろいなぁとか、なんていうふうに思うんですよね。

宇多丸 そういう目線でご覧になってると、たとえば彼女達が、けっしてその、うまくひろえない人がいるでしょうし、たとえばまあ今回の峯岸さんとか、なんか、というかその、彼女達をどうにも不幸になってしまう瞬間みたいなのって、すごいしょうがない質問ですけど。

秋元さんとしても胸がこう痛んだりっていうのはあるんですか?

秋元 もちろんそうですね
宇多丸 今回の映画で言えば、戸賀崎さんが泣いてるじゃないですか?
あれみて結構、でも目から鱗っていうか、そりゃそうだよなっていうか
秋元 いや、やっぱたぶん、僕と、その久保田君ってオーナーと戸賀崎が、いままで劇場含めAKBで一番泣いてると思いますよね。感動も含めて。くやしいというのもあるし。
宇多丸 たとえば、平嶋さんとかがああいうかたちで辞めざるを得ない、秋元さん的には忸怩たる重いがある訳ですか?
秋元 ありますね。それはだからたぶん、平嶋ともずーっとメールのやり取りをしたし、まあ、その、なんですかね、次にどうするかだと思うんですよ。

けっきょくおきてしまった事はあーだこうだいっても、その、しょうがないですよね。つまり、彼女達もどうしていいか分からないから。
だから、たぶん平嶋に関しては、こういうふうに辞退します、って言うから、その後のどうしようかっていう事を考えますよね。

だからそれはもちろんそれはプロダクションにもお願いして、それは首にしないでくれってことも言いますし、あるいはどういう機会で、力になってあげられるか、も考えますよね。

宇多丸 あ〜そっかそっか。
秋元 あの、なんですかね、やっぱり一番はその、それぞれが同じ方向でなくて、バラバラしたところで芽が出るから、ですね。
宇多丸 これ、すごい、こやって伺うと、あ、ものすごい目配り届いていて、まあ、まったくすばらしいと思うんだけど、なんですかね、この、見え方との乖離は。
秋元 一つはその、説明しないって言うのがありますよね。一つは説明しない、もう一つは、それは僕がそういう風に思っているだけで、実際は目が行き届いていないところもいっぱいありますよ、そりゃぁ。
宇多丸 目が行き届いていないうえ、なんですかね?
秋元 もう、もちろん。それは全部がねえ、200何人、一つ一つの事で言えば、いや、それはないんじゃないの?ということもいっぱいあるし、その判断は無いでしょうっていう事もあるし、まあ、それを全部は、だからあとはスタッフを育てる事だと思うし、
宇多丸 あと、本質としてですよでも、その、面白さって言う所と残酷さはいっこ背中合わせだったりするっていう…
秋元 あのね、残酷にしたいとか、負荷をかけたいっていう、ずっと先週の放送で負荷って仰ってたけど、負荷をかけたいなんていう事は何も思ってないですよ。
宇多丸 たとえば試練のある課題がある

秋元 うん、試練とか課題とかではなくて、ようするに動いていく、動いていく訳じゃないですか、AKBで進行形で。

で、その次に行くのはこっちだ、次に行くのはこっちだってことがあって、それがある人にとってたとえば「Give me five!」って曲で今度はみんなでバンドをやろう、と。

じゃあバンドでどうしようかって、じゃあ前田はリードギターな、とか、柏木はドラムな、とかいった時に、それを「え、ドラムやらなきゃいけないの?」ていう負荷と感じるか。

宇多丸 あれはでも、いいあれですよね、いい試練っていうか。だし、それで例えば演奏はね、たとえプロのごく上手い人と比べれば多少ダメでも、見ている側はすごくその達成感も含みで、あ、あれは珍しく、本人達も楽しそうだし、こっちも楽しい、こういうのもあるんだと思ったんですけど。
秋元 たとえば、だって、え〜指原が、指原がなんかありました、と。本人の話も、僕はそんなに聞かないですよ。だって、よくわかんないもん。

だいたい本人にさ、本当の所どうなんだっつっても、本当の所も、ね、あやふやだし、で、そうなった時になんかその、指原らしいのはなんなんだろうって事が、たまたま福岡で、その、まあ、そろそろメジャーデビューもしなきゃいけないし、じゃあまとめる役としていくのはいいんじゃないかなって思ったとか。

宇多丸 あれもね、結果的にはwin winになった感じもあるからあれですけど、なんだろうなぁ、やっぱり、総選挙とかのイメージなんですかね?じゃあ。もっぱら総選挙のイメージで僕も含めて語りがちってことでしょうかね。あれはけっこうやっぱり厳しい感じがするじゃないですか。
秋元 まあ、あの、たぶん、可視化したことによって、そこでね、なんかすべてが大変に見えてくるんですよ。でも、本当は日常で行われている事なんですね。

オーディションにいけば、オーディションでそこでみんなの前でなんとかっつって。
たとえば昔のね、ねるとんとかもそうじゃないですか。ねるとんとかは、こう(前に)いって、あれ、呼ばれなかった人って…

宇多丸 残された女の子って?(どこにいったって)いつも思ってたんですよ。
秋元 あれ、残された女の子ね、いつのまにか消えてるんですよ。画面からスススって。
宇多丸 自分から行くじゃないですか、あれひでえなって思っていて。
秋元 でね、僕ね、そこが分からないんだけど、テレビをずっと作ってきて思ったのは、アイアンシェフね。料理の鉄人。あれ、昔からああいう企画ってあったんでしょうね。
宇多丸 勝ち負けを決める、ね。
秋元 そうそう。だけど、負けた方どうすんの?と。プロじゃんって。
プロが負けたらシャレにならないよねっていうのがあって。でもそれを、まあ、そのフジテレビのスタッフが、うまいかたちで、出てくる事だけでステータスなんだよっていうふうになった。

あるいは、ほこたてみたいな、ね。ほこたてだって、これ、負けたら、だってもうおたがい名刺交換して、会社同士でなんだか…。でも、結局、そういう時代なんだと思ってるんですね。だから、総選挙って一位以外、みんな納得してないでしょ。

宇多丸 まあ、本質的にはそういう事ですよね。
秋元 一位以外納得してない。で、その納得してないってことが、一年目にやって、これが悪い方向に行くんだったら辞めようと思ってたんだけど、やっぱりひとつの目標となり、自分の位置を知る事になり、ていう事がもしかしたらその勝ち負けよりも、負けても勝ってもいいんじゃないかってことが一つありますよね。
宇多丸 まあ、上位はそれでもいんですけどね、やっぱそれこそ「ねるとん」で横にスーっと引いていく女の子達のように、こう、最後の方に残っている子達を見ていると
秋元 そうね、それはすごいありますね。
宇多丸 で、実際例えば今回の3作目のドキュメンタリーでも光宗さんが、どてーって。

ずーっとあの何時間か、ね、苦しんでたかと思うと、しかもそれに対してあの作品内ではなんの説明もないし、で結果、辞められたっていう事実だけがあるだけで、なんかものすごい、こう、

秋元 あれは、あそこで今の光宗のコメント欲しいよね。

宇多丸 ちなみに今回の3作目も含めて、ドキュメンタリーのあれってどの程度、秋元さんご指示というか、
秋元 もう、一回目ラッシュをみて、感想を言いますけど、やっぱり栄樹監督に任せますよね。
宇多丸 今回も、照合というかそれを見て
秋元 見ました、見ましたよ。
宇多丸 そういった時ってどういう指示をされるんですか?
秋元 指示じゃないですね、感想ですね。
宇多丸 感想?
秋元 だってやっぱり、それは監督のものなんで、あそこはこうしてほしい、あそこはこうして欲しいっていうのは
宇多丸 細かく言うわけではない?
秋元 ないですね。
宇多丸 大筋としての、たとえば2作目の、まあ、言っちゃえば非常に露悪的なというかちょっとダークで痛い所を出しましょうとか、今回はセンター論でいきましょうとかって、大筋は指示されたりするんですか?
秋元 いや、しないですね。もちろんミーティングはしますけど、まあ、監督がなにをやりたいか。

ただ、そのプロデューサーとしてはやっぱり2本目と3本目っていうのが単なるAKBのね、1年のスケジュールを追っているような、時系列で並んだものだとつまんないんじゃないんですかという話はしたけど、でも今回がセンター論でとか、前回がなんだろな…

宇多丸 ダークサイドというか
秋元 うん、そういうのは無いですよ。ただ、よくね、一番あれなのは、奇をてらった事をやろうというよりも、たとえばその、監督の思いですよね。

だからたぶん2作目にやっぱり被災地の映像を入れたのは、彼が岩手出身で、思いがあって、でもやっぱり監督ってそういう客観性よりもなんか主観がもっと強くないと、ドキュメンタリーといえどもね、無きゃいけないと思うんで、それはいい意味でも悪い意味でも監督作品だと思いますけどね。

宇多丸 僕はこの2作に高橋栄樹さんの、AKBにたいするちょっと客観的な、というかね、単純にこの少女達が、例えばそのかわいそうじゃないかとか、これでいいのかなみたいな、そこを、すごく栄樹さんの気持ちっていうか、考えている気持ちの部分をすごく強く感じたんですよね。

たとえばその恋愛禁止の件に関してもあきらかに、後のその、たとえば峯岸さんの事件を知っていれば、これはやっぱりその、今彼女はこの中ですごく葛藤してる、結果としてそれを分かるってことだけど、たかみなでさえ、その、全員その、ありうることだ、なんてことを言ってるっていうのをだすという、ま映しちゃって見せるということ事自体に、なにかその、今のままでいいんですかね?っていう、なんかこう問題提起とまでははっきりしたものではないけれど…。

秋元 だから、それは多分高橋栄樹だけではなく、未知なことをやっているので、それはスタッフ全員にあると思うんですよ。

それはたとえば冒頭に申し上げたように、やっぱり女子校みたいなもんだからね。女子校に本当にこの教育方針で正しいんだろうか?

ね、だけど、目を離せばもしかしたら、え〜、制服を脱いでどっかに遊ぶに行く奴もいる、で、それはいんだろうかとか、そういうことも含めて正解は無いんですよね。

宇多丸 束ねるのに、一種規律は必要だろうし
秋元 だからね、その〜、宇多丸さん達がきっかけに、って事は無いんですけど、やはり今は臨床心理士であるとか、スクールカウンセラーであるとか、もうべたつきで付いてますよ。
宇多丸 マジすか?
秋元 だけど、ついてね、毎週のようにそこに先生がいてアンケートとっても、それでじゃあ、今の女子校がそれでね、悩みが無くなるかって言う事でもないしね。
宇多丸 僕はやっぱ、秋元さんが直接話すのが、一番のカウンセリングだと思いますけどね。
秋元 や、もちろんその、僕が見てこれはちゃんと話した方がいいなって思うものはありますけど、それは全部は無理ですよね。

>>4に続く

<<前へ
対談TOPへ


スポンサードリンク

関連記事:

スポンサーリンク