秋元康☓宇多丸 スペシャル対談 全文書き起し6-6【ウィークエンド・シャッフル】

※写真は2008年の対談時のものです。

宇多丸 そう考えると、秋元さんのビジョンで常に、保守性の逆な訳じゃないですか、常に。

やっぱね、この言い方失礼かもしれませんけど、他のやってることの過激さとか、おもしろさとか、先進性に対して、やっぱりなんで曲がワンステップ、保守なような気がするんですね。

すくなくともカップリングとかは、もうちょっとめちゃくちゃやってもいいんじゃないのかなって気が。もしくはカップリングはファンサービスでもいいかもしれないですよ。

秋元 かもしんないね。
宇多丸 なんか、もう一個攻めようが…
秋元 あんまりないんだよね、攻めようとか。

あるいはこれが守りだと思ってなくて、なんとなくこれはこういうことなんだろうなぁとかっていう、この曲はこうなんだろうなぁっていう。

たとえば昔はもっと狙ってましたよ。狙ってるっていうか、例えばずっと前に「桜の栞」って合唱曲を作ろうと。

宇多丸 あれ、面白かったですね。
秋元 で、合唱曲をずっと、あの曲も、2005~2006年から持ってたんですよ。で、ここだっていうタイミングで「River」の後ですか。
宇多丸 あれ、合唱曲は面白いと思いました。
秋元 「River」の後に出す、そういうのの遊びは、昔はしてたんだけど
宇多丸 昔っていっても数年前じゃないですか
秋元 3年前ですね。3~4年前ですね。だけど、ん〜、だからそこまでの、その、遊ぼうっていうのはないかもね。
宇多丸 忙しすぎるんじゃないですか?
秋元 ん〜、そういうなんか、つまり、もうヒントというかね、なんか、こういうことやってみようっていうのがないと、あれかもしれない。
宇多丸 なるほど、なるほど。でも、その、いつでも、おもしろいなと思えば、全然やるよ、と。
秋元 ん〜、そうですね。
宇多丸 あと、AKBの落としどころっていうか、考えられたりしてます?

たとえばおニャン子はある程度までいって、ぽんっと終わったじゃないですか。たいていのアイドルグループはどっかで終わるんだけど。

まあ、モーニング娘。みたいのもありますけど。永久機関的なものを考えているのか、落としどころがもしあるなら、こんなところで言えないと思いますけど。

秋元 いやいや、希望としては、永久の学校でありたいなと。

やっぱり、創立が2005年の学校で、初代校長が秋元康という人で、この人が、ある理念の元に作った学校だと。それが、どこかでバトンタッチして2代目が成り代わって、いや、そうじゃないと。もっと文武両道だと。

ね。それでもっと、まず筆記で勉強ができないと入れないとするのもあるのかもしれない。っていうのがありますよね。

宇多丸 ただ、こう、それってまあ、理想としてはそうだとして、今限りなく全盛期として、これからもっと大きくなるかどうか分からないですけど、仮にですよ、人気がだんだん右肩下がりになっていって、いまと比べて小さくなったとしても、続ける?
秋元 いや、もちろん。あの、それは形が元に戻るだけだからね。つまり、あの、今の状態の方がおかしいわけで、
宇多丸 今の状態の方がおかしい?

秋元 おかしいでしょう。つまり、もともとは、その、劇場が主なんですよ。

もちろんそこから出ようと思ってましたよ。だけど、その、劇場が主でそこからちょうど端境期というか、ちょうど初期メンバー達が一巡して、たぶんまた劇場で次の前田敦子、次の大島優子が育って、また何年か後にまたピークを迎えるような形になるのかも知んないし。

あるいはこのまま自動的に、それが入れ替わっていくのかもしれないし。それは僕にも分からないですよ。

宇多丸 アイドルの歴史もね、まだ、何度目かの波があるだけですもんね。
秋元 ただね、その、回付ってことが、もしかしたらAKBは、なんか変わったのかなっていう感じがするんですね。

僕が思っている、やっぱりむかしのアイドルってのは、やっぱり不可視なものであって、そこにみんなが想像したり、ね、そこにさ、やっぱりさ、ブブカが、こうらしいぜって言う話があって面白かったのが、いや、こうなのよってオープンにしちゃった所で、やっぱりそのアイドルというよりも、部活動に近いのかなって。

あの、おニャン子クラブも部活動っていってたんだけど、課外授業っていってたんだけど、やっぱりそれは見せたくない所は全部、こう、貼ってたわけですよね。

宇多丸 なんか僕も、アイドル戦国時代っていって、今もこっち盛り上がってるし、AKBも盛り上がってて、一緒の現象見たく見えるけど、なんか、別のルールのスポーツが始まったみたいな感じがちょっと抱きますね。
秋元 だから、なんかAKBがいろんなものを内包してて、そこのメッセージ性がすごく強いんですよね。いろんなものを内包してますのでね。
宇多丸 それだけに入り口もあちこちにあるから、はいりやすいっていう
秋元 だから、やっぱりいろんな人がAKBに対して苦言を呈したりする事も
宇多丸 コメントしやすいのも実は
秋元 そうね。
宇多丸 コミットしやすいってことですもんね。
秋元 だからそれはもしかしたら、アイドルでは無いのかもしれないですね。

だって、普通だったらどっかで「しょせんアイドルですから」っていうエクスキューズがあるわけじゃないですか。だけど、やっぱもうアイドルといえども許してもらえない。

みんな、「だって、AKBでしょ?」っていうようなコメントのされ方をすると、もう、なんだろう、アイドルなんで、「これはアイドルの何とかゴッコみたいなもんですよ」というようにならない。

宇多丸 そこと、もうすでにアイドルじゃないなにか新しい形のルールのなにか、なのに、なんかそこに僕らから見るとですよ、旧アイドル的な、たとえば恋愛禁止であったりとか。

なにかこう昔の脳裏、ファンの要望がこうだからっていう昔のままのルールとが、なんか、食い合わせが悪いまま、共存している形が、感じがたぶん、僕らが感じる、気持ち悪い感じ

秋元 だから、一つ一つのたとえば、昔、僕がザ・ベストテンっていう番組を見てて、構成をやってて、アイドル、歌手と言われる人たちを見てたんですよね。で、よく、なんでここでこんな曲を出すんだと思っていた。あるいは直接その歌手になんでこんな曲出すの?ってあった。

でも、大人になって見ると、あれはその、その瞬間しか見てないんだよね。次のこのバラードを活かす為にはこれを歌わなきゃならないっていうのが、ね、全体的な長期的なプロデュースであるじゃないですか。

だから、AKBってやっぱり、今、何をやっても瞬間をスチールで押さえられるようにパシャンと撮られる。そうすると、それにたいしての是非が問われるんだよね。

だけど、AKBって連続してるから、や、そこでは確かにそうだったんだけど、今見てくださいよ、と。ここの部分、ここはそういうのが直って、少し良くなったじゃないですか、とかって言う事をたぶん繰り返しているんだと思う。

そこの部分が、まあ、なかなか理解されない部分もあるのかもしれないし。

宇多丸 たぶんその、秋元さんのマスタープランにのっとって進んでるんだっていうビジョンが、そうさせてると思うんですよ。そうじゃないんだと。

その、先の事は分からなくて、そのつどそのつどで、良き方向を

秋元 だからやっぱりそれは、すべてがなんか、陰謀説みたいなもんですよ。
宇多丸 やっぱそれはAKBに限らずですけど、陰謀論?生まれやすい時代だと思うけど、だからこそ、秋元さんもっと出て「人間だよ!」っていうのを見せるだけでもだいぶ違うという気がするんですよね。
秋元 そうかもね。でも、やっぱり、その、まあグーグルなんかでもまだ発表しちゃ行けない事発表しちゃったり、こうなんか勢いが余るんだよね。むずかしいね。

でもね全部をわかってほしいという思いと、全部説明してもわかってもらえないだろうなっていう思いとぶつかるんじゃないかな。

宇多丸 秋元さん、たぶん業界というか、長くやり過ぎてて、あきらめの部分かもしれないですけどね。
秋元 ん〜、だからつまり、何を言っても揚げ足をとる人たちがいるからね、
宇多丸 まあね、それはどんな表現もあることだし
秋元 それが、その、それが、そこに体力を使う事が、今必要なのかってことですよね。

だからもちろんこういう場をいただいて、ちゃんと、あれはこうでこうでこうなんですよって話すのも、それは去年のドキュメンタリーの宇多丸さんとかコンバットRECさんの話に、そうだよなぁ、って言う事の流れだしね、

宇多丸 でも、秋元さん割とそういう、たとえばブブカにでたりとか、こんだけお忙しいのに、こういう、なんてのかな、根っこの部分の
秋元 あのね、僕は、やっぱり、本当は、その、こっち側にいたいんですよ。本当は。

だから宇多丸さんであれコンバットレックさんなり、だから、新宿のあれなんか、すごい楽しかった訳。

宇多丸 はいはい、ロフトプラスワンの。まさかのですよね。
秋元 あれなんか、すごく面白かったなって。やっぱりさ、そういうことが、なんでクソ曲と言われるのかわからないみたいな話を、本当はしたい訳じゃん。
宇多丸 あれでも、クソ曲って言わないでっていうのが、ほんと、やすすイメージ大幅アップな訳ですよ。あ、やっぱ、あの、やっぱそうだよなっていうかさ、
秋元 その、なんか、そういうことも厚顔無恥というか何もそんな事も気にしない感じがするんだ。
宇多丸 たぶん世の中の人は、たぶん秋元さんが思っている以上に、もう、屁とも思っていない、なに言われても、お金儲かってるから関係ないねって言う人だと言う、マジで思われてますよ。
秋元 ん〜、まあね、でも、ほんとはああいう、そこが面白いんだよね。

本当はクソ曲って、別にクソ曲って言われることをネタに、話してる人たちと一緒に話してる事が面白い。

どれがクソ曲で、どれがクソ曲じゃないのかとかって言う話がしたいんだけど、そうするとなんか、こうまた、なにかでクソ曲発言とか書かれる

宇多丸 もっと言えば、計算なんでしょとかね、あるかもしんないですけど、そこまでいったらもう堂々巡り。
秋元 堂々巡り、なんかのときに、いつだったかなぁ、曲が漏洩した訳ですよね。その時にあれが秋元の宣伝だっていわれて、いや宣伝だったらもうちょっと、少なくともラフミックスでもいいからもうちょっといい音で出したかったよみたいな。

だから、そういった事に疲れちゃったの。なにやっても、いろいろ言われるんだったら、みなさんの言う事、ごもっともでじっとしてた方がいいかなって思いますね。

宇多丸 でも、不可視化してくと、僕はあれだと思いますね。だから、次回ドキュメンタリーなのか、なんなのか、ぼくはそっちのほうがいいと思います。

こうやってお話しできて、ちょっとでも会った、陰謀論、ボス的イメージが消えますもん。あ、迷ってるんだ、とか。

秋元 いや、迷うし。だから、またほら、最近ね、すごい負荷がかかるのよ自分に。メンバーじゃないのよ、自分に。

それは何かというと、ここで本当はさぁ、俺が卒業したいよ、っていうと、また「秋元康卒業します宣言」って出ちゃうし、それが出るだけならまだいいんだけど、なんだろ、逃げ足早いとか書かれるでしょ。

宇多丸 まあねぇ。
秋元 それがなんかね、
宇多丸 逆になんか、気にし過ぎじゃないですか?そのネガティブ風評を。
秋元 いや、そういうわけではないんだけど、なんだろうな、ま、疲れるよね。
宇多丸 いや、ぜひ、僕は秋元さんにもうちょっと出て、説明してほしいし、可視化らしい、時に弱音も吐くやすすはぜったいプラスだと思いますし、たとえばメンバーとの、そのもちろん出せない所も、出せるところももちろんあるとしても、こういう話をしたとか、っていう件はすごく大事だと思いますけどね。

秋元 それは、さっきの話じゃないけども、一部を説明する事が、全てを説明しなければ行けない事と同じで、誰々の時は秋元さんがすごく相談にのってくれてっていうことを、毎回それは難しい。

だけど、ただ、僕が気付いた事に関しては、それは峯岸のその後であったりとか、たとえば仁藤もやりとりもするし、それは気にしますよね。

宇多丸 まあ、その、気にしてやり取りするし、たとえば辞めるメンバーもキャリアも含めて、ちゃんとできるだけフォローしていこうとしてるっていうことさえ、伝わってないですよ。

だって。もっと、してくださいってことかもしれないし。

秋元 まあ、そうかもしれないね。

でも、やっぱりそれはAKBっていうのはね、やっぱりチームだから、やっぱり、僕がプランニングしたり、僕が全体像を、総監督を仮にやってるとしたら、やっぱそこにはバッティングコーチがいて、ピッチングコーチがいて、それぞれの専門家でやってるんですね。

そこで、例えば移籍問題じゃないけど、コーチでは話が通じなくなった時に話すって言う、一応のルールを作らないと、その、ねえ。

宇多丸 たしかに、全部に秋元さんが首を突っ込んでっていいのか、っていう
秋元 あのね、それはたとえばSKEでもNMBでも、HKTでもそうなんだけど、やっぱり一番大事なのは、自由奔放にやって、なやんだり、苦しんだり、笑ったり、いろんな事をしてる中に輝くものがあるんだよね。

だからさっきの、煎ったフライパンのぐりぐりぐりぎりトウモロコシのやってると、その中で始める。それを待たなきゃ行けないんだけど、このトウモロコシをなんとかはじかせようはじかせようというのが、たぶんいけないんだと思う。

もうちょっとなんか、まあ、そこが難しいですよ。難しいけど自主性に任せないと、なんかだから恋愛禁止条例ってのも、たぶん自主性の中でそういうことを言い始めたんだと思うし、

宇多丸 自主性とね、たしかにプラスの面では仰る通りだと思うんですけど、同時にリスクと背中合わせでもある。

いや、単純に僕らの世代は心配な訳ですよ。この人数いて、ま、けっこう大変な。

秋元 いや、だから、それは、僕はもう、みなさんに言われるまでもなく、一番、思春期の子達なので、それはもう、一番スタッフに強く煎ってる事だし、厳しくいってる事だし、あるいはもう、そこでみんなが温かく見守らなきゃいけない、と思ってるんですよ。

だけど、そこのなかに、どこまで本音を言ってくれるか、

宇多丸 まあ、全部が分かる訳ではない。ほんと学校ですね。
秋元 学校なの。学校とおんなじ問題を抱えているよね。

先生を信頼しなさい。あるいは担任の先生を信頼しなさい。担任の先生でダメなら、校長先生の所に直接きてもいいよ。っていうことを言ってるんだけども、はたしてそれで信頼してもらえるだろうか。

でも、そこのなかで、成績は否応無く付く。あるいは大学受験するとしたら、自分の希望と入れる大学の差がある。そこに悩む。

そこでたとえば勉強方法が違うんだよだとか、あなたは文系なんだから文系にいった方がいいよ、ていうようなアドバイスが出来ればいいけど、そうじゃないときに中々難しい。

でも、それは難しいから諦めている訳ではなく、それは一番どんな会議であっても、僕が一番ケアしてるのはそこですね。

宇多丸 いや、だとしたら、そのケアの、いまの言葉があるだけでも違うと思うんですよね。やっぱり結論、秋元さんもっと前にでた方がいいっていう事だと思いますけどね。
秋元 ん〜、じゃあ、また、よんでください。定期的にぼくが報告に。
宇多丸 そういった場にしてくれるなら、それが何よりですね。よかったです、お時間とっていただいて。
秋元 どうもありがとうございます。
宇多丸 どうもありがとうございます。

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