秋元康☓宇多丸 スペシャル対談 全文書き起し6-1【ウィークエンド・シャッフル】

※写真は2008年の対談時のものです。

   


 

秋元 あの〜、全然なに聞いていただいても、かまわないので
宇多丸 もうなんか、お受けいただくのが本当に
秋元 いえいえ
宇多丸 この状態ではちょっと、っていう…。いま締め切りかかえてないんですか?
秋元 いや、かかえてますよ 笑。抱えてるけど、あの〜、なんだろ、前回のドキュメンンタリーの時に、宇多丸さん達がいろいろ話してくれて、それを聞いてね「うん、そうだよな〜」とか、いろいろ考える所があって、それでスタッフ全員に「これ聞け」っつって
宇多丸 あ、やっぱその噂は本当だった…?
秋元 本当ですよ。まあ、だから、ぜひね、一度ちゃんと話ししたかったなって。
宇多丸 ありがとうございます。

対談スタート

宇多丸 あの、僕らがずーっとこう、いろいろ話しあってる事って、大きく言って2つだと思うんですけど、ま、アイドルというこの文化というかジャンルの面白さが、本当の面白さを引き出すにはどういうやり方があるか、という事と、もうひとつはこれ完全に表裏一体ですけど、アイドルという物が持つ…というか帯びてしまう一種の不幸さみたいなものを、まあ解消とまでは言わないまでも軽減できないものか、っていうのがずっとあって…。

じゃあ、それに関してちょっと、このタイミングではどうしてもこの件をちょっとお話しいただかない事には、いま、始まらないのでちょっと伺いますが…。

あの〜、峯岸みなみさんの丸刈り動画事件というか、ありましたね。まず、その件について秋元さんどうお考えなのかを、率直に伺いたいんですが。

秋元 ん〜、やっぱりその、メンバーの意思を尊重するって言うことと、それから、世間での見え方はやっぱり誤差を生むな、と。つまり、いくらそのメンバーの事を思い、それをストレートに「じゃ、そのまま出してあげよう」と思っても、たぶんそれが昔の小さい頃のAKBだったら、そこでそのリアルさとか「ああ、そういう風に思ってるんだ」っていうのが直で良かったんだけど、やっぱりあそこまで大きなニュースになっちゃうと、その本人も、自分が言った事した事がすごく大事(おおごと)になって、よけいな負荷をかけてしまうのかなあと思って。

それはどういう事かというと、もともとは、そういう話があった時に、峯岸の方から自分でファンのみなさんに伝えたいと。で、その方法がyoutubeっていうのが、前の前田敦子が選挙を辞退する時の、あれが一番いいんじゃないかという話になり、じゃそれで、って話でスタートしてたんですね。ところが本人が、もっと自分が反省してるということを表したくてそういう行動をとったと。

まあ、それが、そのたぶん、なんだろな…、ある種の気合いだったとおもうんですよね、たぶん本人的に。本人的にはね。ただそれが気合いとか以前に、それはある種のその場にいたヘアメイクとか、わからないですけど、管理責任も問われるだろうし、大人としての周りの反応とかも問われる事になった事を、本人は逆にこう心配しちゃってるってことが、どこまで。いま、だからAKBが抱えている問題はそこだと思うんですよね。昔のように、リアルだからいい、あるいは…

宇多丸 本人の気合いが入っているからいい?
秋元 そうそうそう、そういうことではなく、それがどういう、つまりAKBを知らない人、AKBという活動を知らない人にとっては、ある日、ね、奇異な姿が。
あの、僕もyoutubeを見て、別にチェックする間もなくでてしまったので、
宇多丸 あ、そうなんですか。その辺、伺いたかったんですよね。
秋元 うん、だから、そう、それはね、当然、ずっとその、全員の事を見ている訳ではないので。
宇多丸 どの段階でお知りになったんですか?
秋元 youtube、youtubeです。
宇多丸 マジですか、そうですか。
秋元 もちろんアレですよ、謝罪コメントをしたいって言うのも知ってましたし、謝罪コメントを今日、ね、なんかの時に撮りますってのは聞いてましたけど、
宇多丸 丸刈りになってるって言うのは
秋元 いや、それはもう、途中でで連絡は入りましたよ。でも想像では、まあ、たぶんちょっと短くしたんだろうなぁ程度に思うじゃないですか。
宇多丸 あそこまでとは思わなかった?
秋元 思わなかったですね。
宇多丸 その後、峯岸さんご本人とお話ししたりとかって?
秋元 あの〜、メールのやり取り、そのあと電話でも話しはしましたがね。でも、まあ本人は事の大きさ、事が大きくなっていく事に対しての不安ですよね。つまり、その事がAKBに迷惑をかけている、逆にね。なんじゃないかっていう
宇多丸 これはやっぱり、でも秋元さんもたぶんそう思われてるかもしれないですけど。とにかくその周りの大人が、これがありだと思ったのか?っというのが、けっこう僕ら的にはちょっと信じがたいって言うか…。やっぱ、あまりにも世間一般の常識と乖離しすぎているというか…。
秋元 うん。
宇多丸 あの〜、なので、たとえば世の中の人はそもそも秋元さんが指示したと誤解している人もいるだろうし。
秋元 まあ、もちろん、あたりまえだけれども、まあ、僕がその場にいたら止めたでしょうね。ただ、問題はそこに僕がいて止めたか止めないかという事よりも、やっぱりそうまでして反省の意を見せたかったって事に、もしかしたらいままでの、その、スキャンダルと対峙する答えの難しさってのがあるのかなと思いましたよね。

宇多丸 あの〜、やっぱそこで、たとえばファンの、僕がもっとこうディープなね、もっとakb一筋のファンで、峯岸さんのファンでだったら「その気合いやよし!」みたいな受け方をする事も可能、あり得ない話ではないと思うけど、やっぱりこういうことが起こるたび、これ、別に丸刈りじゃなくてもこういうことが起こるときに、なんか世間との距離感みたいなのは、あらためて浮き彫りになっちゃうと思うんですよ。

つまりアイドルという文化と。恋愛禁止っていうのに、それなりに妥当性があるのは、みんなまあそうなんでしょうねとは思いながら、そんなに罰されるようなことなの?っていうのがやっぱり世の中の…。

秋元 あのね、ちょっとちがうかな?
まあ、もちろん一つはたぶんね、そこがakbのなかで、まあ難しい所なのは、できるだけファンのみなさんとメンバーの距離感を近くしたい。

だから、ファン、たとえば一つの判断は、たとえばSNSのような、つまりgoogle+のようなものを、あるいはTwitterみたいなことをある種許可している時点で、もう情報はだだ漏れで、でも、それもふくめてAKBだなってなって。

だから、もしかしたらそういうことも本来であればもっとあれもだめ、これもだめ、あるいは世間に対してそういうことしちゃだめ、あるいは、たとえば謝罪のコメントなんか無し、とかっていうのも出来なくはないと思うんですよ。

宇多丸 もっと完全管理した状況というのも可能だと?
秋元 そうそうそう。だけど、はたしてそれがいいのかなぁ、というのがあって、どうなのかなぁって。
まだ、結論は出ないですよね。ただ、その、けっしてね大人達がけしかけたとか、あるいはその大人達が黙認したとかではなくね、やっぱりそこの本人の思いっていうものが、どこまで伝えていいものなのかっていう事ですよね。
宇多丸 相乗した結果っていうね。あの〜、ちょっと本筋とは、ずれますけど、ちょっと心配なのは、峯岸さん大丈夫かな、っていうのは、いまの状態がむしろ心配っていう…。
秋元 いや、もちろん、あの、元気ですよ、全然。
だけど、ほら、その、何をやっても。
だから本来はここで僕がこういうコメントをすればしたでまた炎上するし。
宇多丸 話題に出せば出すほどね。
秋元 だから本当は、そういうことはコメントしないほうがいいなぁ、と思うんだけども。
でもまあ今日せっかく宇多丸さんが、先週のを聞かせていただいたし、ちゃんと話すべきだなあと思って話すんですけど、つまり、あの〜、たとえば、そういうことが一大事になったと。
宇多丸 はい
秋元 ね?その、峯岸が。
で、本人も慌てて、当然まわりもみんなどうしたどうしたと、なんだこれはとなるじゃないですか。

そうなりました、そしたら今度は周りのメンバーが、初期メンバーが大変だーっていうんで集まったと。

まあ、それは僕らの知らない所でですよ、メンバー同士が集まった。
で彼女達はみぃちゃんがそんなにね「深刻で大変なんじゃないんです、気合いなんですよ」って言うような事をやろうと思ってたぶん、わからないけど、写真撮ったんでしょう、きっと。

宇多丸 ピースしてね。
秋元 で、今度ピースして、「おまえ反省してないのか?」ってなる。そこの…
宇多丸 なんか、やればやるほどね。
秋元 そうそうそう、なんかね、今、その、メンバーもなんかすごくかわいそうだなぁと思うな。

宇多丸 や、そうですよ。でも、あの絵面が、もうはっきりネガティブなものとしてある以上は、なにかやっても…
秋元 炎上だよね
宇多丸 やらなくても、僕、言わなくても、やっぱり邪推も生むし。
あのやっぱ、秋元さんの指示なんでしょ、どうせっていうさ、思っている人だって当然いるだろうし。
自分でやったんじゃなくてやらされたんだって誤解している人もやっぱりいるし。
ただその、彼女がそこまで思い詰めるようなことなのかっていうのが、やっぱ、その世間から見ると異様な事にやっぱ見えちゃうと。
秋元 う〜ん、だからそれはわからないよね〜。
つまりわからないというのは、本人がどこまでそれを問題視するか、ね。

つまり、たとえば、これはもう誤解呼ぶからいいたくもないし、言わないんだけども。

僕は、その、恋愛禁止条例ってのはね、一つのネタとしては歌にしたり、あるいはネタとしては「そうだよな、うちは恋愛禁止条例だからな」といってるけれども、たとえばテレビのコメントでも、なんだっけな、エグザイルのテレビに出た時にも「まあうちはゆるいからね〜」とかっていうのを言っているように、けっして、その、恋愛が禁止なんではなくて。

それはメンバーにもいったんだけども、たぶん高校野球で甲子園を目指している人は、たぶん恋愛する時間がないんじゃないかと。わかんないですよ、それは。イメージで言うと。

たぶん、ガールフレンドと会ってるあいだ、もしかしたら素振りをしたいのかも知んないし。あるいは、朝から晩まで走っているのかもしれないし、っていうようなことで、まあそれは中々難しいかもね。

でも、その本当に好きな人が出来たらそれはしょうがないんじゃないかって話はしてましたよね。

宇多丸 ただ、なんかペナルティみたいなものがやっぱりあるわけじゃないですか。あれもネタなんですか?
秋元 いや、ペナルティはネタ…、ネタっていうとなんかね。
おもしろがっちゃってるみたいだから。
そうじゃなくて、どうしたらつまり…メンバーはたぶんね、どうしたらファンは、いままで応援してくださったファンが許してくれるるだろうかっていうことを考えると思うんですよ。
宇多丸 許すねぇ…。まぁ、そうか。要はユーザーがやっぱりそれを望んでいない以上は、ってことですかね。
秋元 そうでしょうね。
だから、どっち…だってもうはっきりしていますよね。
そういうスキャンダルが出てやっぱ離れちゃう人と、そこのなにかその〜、なんだろな、その、なにかすることによって、まずイメージで言えば社会奉仕みたいな、ね。社会奉仕とお掃除10時間とか。
だから、昔、よく言ってたのがトイレ掃除とかそういうのもありじゃないの?っとかって言うのはありましたよね。
宇多丸 あの〜、うちの、えっとラジオのコンバットRECっていう男が提案したあれで、あの、せっかく総選挙って言うシステムあるんだから、そういうのを自己責任というか、あの〜、恋愛、ま、ありというか、その自己責任で引き受けた上で順位をつければいいじゃないのって事をいってましたけど、その辺はどうですか?
アイディアとしては?

要は、秋元さんがおっしゃるのはそういう事ですよね?恋愛するなとはいってない。
ただ、ファンの人がそれで納得するかどうかは別問題…。

秋元 まあ、ただ(総選挙が)今年どうなるのか分かりませんけれども、やるとしたら、そうなるでしょうね、きっと。
うん、やっぱりみんなその、厳しくなにか…。
これは禁止例で、こういうペナルティがあります。
例えば、一番ファンのみなさんがおっしゃるのは、なんでペナルティが違うんだと。
宇多丸 ルールが。
秋元 そうそう、一貫してないって。
宇多丸 ルールが違うじゃないかって言うのは聞きますね。
秋元 それは、ルールが無いからなんですね。
宇多丸 そんなものは、ほんとは無いから。
秋元 うん、ルールが無いし、ペナルティーの規則も無いから。

でも、たとえば、ずっとそういうのを、うわさがあるけど気をつけなさいっていうマネージャーが指導したり、あるいは遅刻してくるんでそればダメだよってっていうことがあった上での何かと、あるいは何にも無くて過去の事だったりとか、あるいはキャラクターとか、そういうことで、何か考える事はありますよ。
ただ、もう、もう、万策尽き果てたかな。

宇多丸 万策尽き果てた 笑。
秋元 つまり、もう、メンバーに任せると、いろんなね自分の中のアピールも出てきちゃうし、え〜っていうことでいうと、なにやっても狙ってるように思われちゃう。
宇多丸 あ〜。

秋元 だから、あの〜。コンバットRECさんがおっしゃるように、自己責任でもう、ねえ、好きなようにしてそれでファンのみなさんが、逆に「あいつ彼氏いるらしいけどくやしい〜!」って思いながら、それがでも応援しちゃおう、と変わるかもしれないし。
宇多丸 それがかっこいいと思うのか(どうか)。
やっぱ、要は恋愛禁止とか、要はそのアイドルのあり方というのか、80年代半ばからのレギュレーションが2013年に残っちゃってるのがまず不自然だねって、ちょっと。
※レギュレーション…決まり事。ルール。
秋元 あのね、たぶんね、たぶんね、一番の問題がどこにあるかというと、ぼくも先週の宇多丸さんのね、放送を聞いて考えたんですよ。何なんだろうなと。そうすると、一番はAKBが、一応ね、見えるからなんですよ。ガラス張りで中が。
宇多丸 オープンにしてるから。
秋元 つまり、これは80年代から、やっぱりそこの先人達はね、やっぱり正しかったなって思うね。
宇多丸 もっと不可侵にしていたのは正かった。
秋元 そうそうそう。そこで、つまり、もう、すべてそういういろんなごちょごちょしたものをね、あるいは、スキャンダラスなことも全部みせないで、あるいは、もしもそういうことがあってもなにかこれをちゃんと隠すようなことをしていかなきゃいけなかったのかなとも思う。
宇多丸 ただ、今は隠すといっても昔と違ってやっぱりそのベールが、ネットもありますし、みんなの目も…。もう、可視社会というかね。
秋元 もちろんそうです。もちろんそうです。もちろんそうです。もちろんそうなんだけれども、そのことによって、その、そういう時代とともに、ある種の、アイドルという名のミステリアスな部分、つまりアイドルって言うのはトイレに行かないんだ、っていう80年代神話がやっぱりね、みんなtwitterでトイレ言ってたよってのがある訳じゃん。
宇多丸 ま、秋元さん自体が80年代半ばにそれを壊した張本人な訳じゃないですか。
秋元 まあ、そうなのかな。
宇多丸 要は、可視化、リアル化方向にやっぱり先駆者であり、未だにそれの最前線という事じゃないですか、AKB。
秋元 だからね、そこはね、僕の中でも結論出ていないのが、つまり、例えば横山がぐぐたすのなかでトイレの紙が無くなった、とかって言うのを。そんなアイドルいなかったよね。
宇多丸 いまはでも、そういった意味ではいい事だと思うんです、とても。
秋元 でも、それがいい事だから、でも、いいことで、たとえばGoogle+で、その〜、せまられたんですね。つまり、全部、ブログはマネージャーに送って、マネージャーがチェックして上げてた。でもGoogle+に関しては、もう直だから。
宇多丸 もう、まにあわないから。
秋元 だから見せたい部分、ね、それはいいですよね、ありですよねってことは同じ位、それはまずいんじゃないのってことも出てくるわけですよ。
宇多丸 峯岸さんの丸坊主とか、それは社会常識に対してっていう大人の意見も入る間もなく出たりする事もある…。
秋元 そりゃあ、ありますよね。だって、例えば、炎上する事がいっぱいあると。

でも炎上するかもしれません、ということを言われた時に、でもそれは何がこの社会のルールに良くなくて、なにが誤解を招いてって事は自分で学ばないと分かんないから、それはもう、僕らが腹をくくるしかないよねって言うのは、そのときの僕のコメントだったんですよ。

でも、ま、それもやっぱり、ある程度の、なんだろな…。指導した上でじゃないと、ちょっと大変だなって言うのはありますね。

>>2に続く


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